正岡子規『散策集』吟行の道をたどろう！　御幸寺山麓へ①

　さあ、今回は明治28年9月21日の吟行ルートを確認しましょう。

　最初に『散策集』の冒頭文を見てみましょう。

　愛松は中村愛松〔松山市立高等小学校長〕、碌堂は柳原極堂、梅屋は大島梅屋〔松山市立高等小学校教員〕のことです。この日は４人で吟行を行っています。

　現在、ロープウェイ街のところに東雲学園がありますよね。ここにはかつて病院があったので、いつしか地域の人々が「病院下」と呼ぶようになったのです。

　そうですか。では、現在東雲学園がある場所の変遷をまとめましょう。

　その通りです。

　『散策集』では、冒頭文のあと句が続くので、細かなルートは分かりません。柳原極堂の回想を頼りましょう。

　焦らずに。吟行ルートをたどりながら、各名称についても解説していきます。まずは、東雲神社周辺を地図で確認しましょうか。

　愚陀仏庵を出発して東雲神社付近に至るまでに子規は３つの句を詠んでいます。

　まず「毘沙門阪」についてです。加藤嘉明が松山城を築城した際、城の北東の位置に鬼門避けとして毘沙門堂を建て、毘沙門天をまつって城の平安を祈ったことから、いつしか地域の人々が「毘沙門坂」と呼ぶようになったのです。

　次に「社壇百級」についてです。これは東雲神社の石段のことで、200段あります。子規たちがその場所を訪れたとき、誰かが石段を登っていたのですね。

　それでは、愚陀仏庵から東雲神社までの現況を写真で確認しましょう。

　そうですね。このあと子規たちは東へ歩を進め、常楽寺を訪れました。ここで二つの句を詠んでいます。

　まず「狸」について。常楽寺は加藤嘉明が建てた寺院で、境内には鬼門避けに榎木が植えられていました。そこに住み着いたのが「六角堂狸」です。当初は人を惑わせることばかりをしていましたが、住職に嗜められてからは改心して人の願いを叶えるようになったというエピソードがあります。その後、この狸は「榎大明神」として人々が信仰するようになったそうです。

　聖徳太子に由来する京都の六角堂の流れをくむ社が常楽寺の境内にありますよ。

　常楽寺の境内に稲荷神社があります。稲荷とは「稲生」という意味で、全ての食物と桑葉を司る神様です。田の神として勧請され、近世以降、一家の繁栄を祈って町内や邸内に祀ることが流行しました。狐は田の神の使者だと考えられています。

　その通りです。常楽寺を撮影した写真を見てみましょうか。

　そうですね。常楽寺を出た子規たちは北へ歩を進め、御幸寺山を目指しました。