愛媛の『これ』は何だろう? 〜西予市明浜町編〜

Teacher

 Erikoさん、この写真は、西予市明浜町高山を訪れた時に撮影したものです。この写真に写っているものは何だと思いますか?

Eriko

 赤色の方に「消」の文字が見えるから、これは消火栓ですね。黄色の方は何だろう?

Teacher

 実は、黄色の方も消火栓なんです。

Eriko

 えっ、そうなんですか?なぜ同じ場所に二つも消火栓があるんだろう?

Teacher

 今日は、その理由を考えていきましょう。

西予市明浜町高山に2種類の消火栓が設置されているのは何故?

Teacher

 まず最初に、高山の位置を確認しましょう。高速を使えば松山から高山まで1時間38分、伊予市双海町経由では2時間8分かかります。

Eriko

 約90kmですか。結構距離がありますね。

Teacher

 そうですね。では次に、高山付近を拡大した地図を見てみましょう。

Eriko

 海岸線が入り組んでいて、山が海岸近くまで迫り出してきていますね。

Teacher

 Erikoさん、このような海岸地形のことを何といいますか?

Eriko

 はい。リアス海岸です。

Teacher

 その通りです。消火栓が二つ設置されている理由を考えるには、リアス海岸という地形的特徴をよく知っておかなければなりません。その形成過程を確認しましょう。

Eriko

 はい。

① リアス海岸の形成過程

Teacher

 リアス海岸の特徴について、国土地理院ホームページの記述を引用しますね。

 地殻変動による陸地の沈降気候の変動による海面の上昇などによって、海岸に近い深い谷〔V字谷〕に海水が入り込み、ノコギリの歯のように複雑に入り組んだ海岸をリアス海岸といいます。

国土地理院ホームページ リアス式海岸 ※ 注釈は引用者による

【参考】国土地理院ホームページ リアス式海岸

Eriko

 そうか、谷になった部分に海水が入り込むから、地図のような海岸地形ができあがったのか!

Teacher

 同じような海岸地形にフィヨルドがあります。これは、氷河の侵食で削られた谷〔U字谷〕に海水が入り込んでできた地形ですので、侵食の規模がリアス海岸に比べて大きく、海水が入り込む量が全く異なります。

ガイランゲルフィヨルドと観光船〔ノルウェー〕 ※ パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集から引用
Teacher

 ちなみに、西予市明浜町狩浜で撮影したリアス海岸の写真を見てみましょう。

宇和海のリアス海岸 ※ 西予市明浜町狩浜にて撮影
Eriko

 侵食により形成された谷の形状が異なることが二つの海岸地形の違いなのですね。

Teacher

 その通りです。では、リアス海岸とフィヨルドの形成過程を動画で確認しましょう。

【世界の地形と気候】リアス海岸、フィヨルド ※ eboardchannnelより〔7分30秒〕
Eriko

 すごい、分かりやすい!

② リアス海岸の特徴

Teacher

 では次に、リアス海岸の特徴を確認しましょう。

  • 海岸線が入り組んでいるため、波が穏やか
  • 入り江は天然の良港となり、漁業養殖業が盛ん。
  • 後背地は山地で海岸に近いため急傾斜地が多く、平地が乏しい
  • 傾斜を利用した果樹園が多く、平地には住居が密集している。
Eriko

 そうか、南予では第一次産業が盛んだと聞いているけど、こうした理由がその背景にあるのですね。

Teacher

 そうです。ですから、このような地域で生活をする人々は、山地を切り開いて段々畑をつくり、麦や芋、桑や柑橘類を育てながら、農業と漁業を中心とした生活スタイルを形成していったのです。

Eriko

 なるほど。

Teacher

 日本人の生活様式や産業構造の変化によって、農業に従事する人々の数が激減し、段々畑はほとんど失われてしまっています。しかし、「耕して天に至る」と称された頃の段々畑が宇和島市の遊子〔ゆす〕というところに残されていますよ。

遊子水荷浦の段畑〔宇和島市〕
Eriko

 これはすごい!

Teacher

 こうした段々畑は、南予一帯に形成されていました。かつての段々畑の姿を知るには、写真家の故原田政章氏が出版した写真集『宇和海』『段々畑』等を読めばいいですよ。

Eriko

 図書館で探してみます。

③ 高山に消火栓が2種類ある理由

Teacher

 さて、高山の消火栓に話を戻しましょう。高山にはなぜ2種類の消火栓があるのかという問いでした。ここまでの説明を聞いて、Erikoさんはどのように考えますか?

Eriko

 2種類ということは、同じ消火栓でも違いがあるということですよね。

Teacher

 そうです。その違いとは何でしょうか?

Eriko

 リアス海岸の特徴として「平地が乏しく住居が密集している」わけですから、道幅が狭いのですよね。だとすると山間部の住宅で火事が発生した場合に消防自動車が火事現場まで行けないということがあり得ます。でも何が違うんだろう?

Teacher

 高山で暮らしておられる方に聞き取り調査を行ったところ、次のように説明してくださいました。

消火栓が二つある理由

 高山の防火用消火栓は、用途が誰にでも分かるよう、黄色と赤色の2色に分けられています。黄色は海水を利用する場合の消火栓で、海岸付近に消防車を置き、そこから海水を各消火栓に送ります。赤色は上水道を利用する場合の消火栓です。建物が密集して建てられていて消防車が入ることができないため、海水を利用できるよう工夫しているのです。」

『えひめ、昭和の記憶 ふるさとのくらしと産業13-西予市①-』 ※ 太字及び下線は引用者による
二種類の消火栓〔西予市明浜町高山にて撮影〕 ※ 町並みの各所に設置されている。
Eriko

 消防車が入れないということは当たっていましたね。でも上水道と海水を使い分けているというのは、やはり集落が密集しているからこその工夫ですね。

Teacher

 その通りです。今日はここまでにしましょう。次回は、高山の歴史について説明します。

Eriko

 はい。ありがとうございました。

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